競合の監視を始めるとき、ツールの料金だけを見て高いと感じることがあります。しかし、監視にかかっている時間を金額に換算すると、判断の基準が変わります。
この記事では、削減時間を金額に変える計算式と、公的統計を使った具体的な試算を紹介します。数字の前提も一緒に確認してください。

ROIは削減時間を金額で見る
ROIは、投資した費用に対してどれだけの効果があったかを表す割合です。競合監視の場合は、監視にかかる時間の削減を金額に換算し、ツールや作業の費用と比べます。
計算式は、(便益-費用)÷費用×100です。便益は、1時間あたりの人件費に削減できた時間を掛けて求めます。売上への貢献は測りにくいため、まずは時間削減だけで評価するのが現実的です。
時間単価は公的統計から出す
時間単価を勘で決めると、試算の説得力がなくなります。厚生労働省の統計を使えば、第三者が同じ手順で追試できる数字になります。
2025年の賃金構造基本統計調査では、一般労働者(男女計)の月額賃金は340.6千円でした。毎月勤労統計調査の2025年分確報でも、一般労働者の所定内給与は月340,634円とほぼ同じ水準です。
ここでは所定内給与340,634円を使い、1日8時間・月20日(160時間)と単純化して、時給約2,129円とします。実際の時間単価は、福利厚生や賞与を含めるともう少し高くなります。

削減時間は1週間の実測から始める
削減時間は、感覚ではなく実測から見積もります。まず1週間、競合の確認にかけた時間を15分単位で記録します。
記録には、見たサイトの数と確認の頻度も添えます。次に、ツールで自動化した場合にどの作業が減るかを書き出します。巡回そのものが減っても内容の判断は残るため、削減率は5割程度から考えると安全です。
実測の期間は、キャンペーンや期末の繁忙期を避けて選びます。平常時の数字のほうが、削減効果を正しく見積もれます。
計算式に当てはめて試算する
例として、週3時間の監視をツールで週1.5時間に減らせたとします。削減は週1.5時間、年間では78時間です。時給2,129円を掛けると、便益は約16.6万円になります。
ツール費用を月5,000円(年6万円)とすると、差引は約10.6万円です。ROIは(166,062円-60,000円)÷60,000円×100で、約177%になります。
回収できない条件も確かめる
削減が週0.5時間(年26時間)しかなければ、便益は約5.5万円で、年6万円の費用を下回ります。この場合はROIがマイナスになり、導入は時期尚早です。
元が取れるラインは、6万円÷2,129円で年約28時間、週に0.6時間ほどの削減です。自分の実測値がこのラインを超えるかどうかを、先に確かめておきましょう。

時間以外の効果をどう扱うか
監視の効果には、時間の削減だけでは測れないものがあります。値下げや新製品の発表に早く気づけば、対応の選択肢が増え、機会損失を防げます。対応が早ければ、価格や在庫の調整を先に打てます。
こうした効果は金額にしにくいため、ROIの計算には入れず、別枠のメモとして残します。海外の調査会社Forresterは、投資評価を費用・便益・柔軟性・リスクの4要素で捉える手法を提唱しています。
時間削減の金額は、あくまで判断の入口です。定性的な効果とあわせて、導入するかどうかを決めれば十分です。
最後に: 数字は前提ごと共有する
ROIの試算は、都合のよい数字を作るためのものではありません。時間単価、削減率、費用の前提をそろえて共有することで、導入の議論が具体的になります。
まずは1週間の実測から始めてください。自分の数字で計算したROIは、どの記事の平均値よりも説得力があります。半年後にもう一度測れば、削減率が想定どおりだったかを確かめられます。
