相見積もりを取ったのに、結局いちばん安い会社に決めただけでは、比較した意味がありません。相見積もりは値切りではなく、価格と品質の妥当性を確かめる手続きです。
この記事では、依頼の準備から比較、不採用の連絡までの流れを整理します。あわせて、独占禁止法や取引上の問題になり得る行為も確認します。

相見積もりの目的は値引きだけではない
目的は3つあります。価格が妥当かを確かめる、品質や対応力を比べる、交渉の材料を得るという目的です。
相見積もりで得た見積もりは、交渉の材料としても使えます。長く同じ会社に発注していると、価格が市場から離れていることに気づきにくくなります。
新しく発注する商材では、1社だけの見積もりでは適正価格か判断できません。複数社を比べることで、提示された価格の根拠を検証できます。
仕様書を共通にして依頼する
最初にやるのは、見積もり依頼書の作成です。仕様やサービスレベルの詳細まで明記し、回答フォーマットは発注側で指定します。
同じ条件で比較するには、仕様書を全社で共通にすることが欠かせません。条件がばらばらだと、安い見積もりが安い理由を検証できず、比較表が意味を失います。
依頼先は大手だけでなく、中堅や地場の会社も候補に入れます。普段は取引のない会社から意外な提案が出ることもあり、候補の幅が比較の質を左右します。

回答期限と連絡方法を揃える
依頼は既存取引先と新規候補を同じタイミングで行い、回収期限も揃えます。受けた質問への回答や条件の変更は、全社に同じ内容をフィードバックします。
値下げ交渉は原則2回まで、という考え方も参考になります。回数を重ねるほど相手の負担が増え、条件の質が下がることがあるためです。
回答期限までの進捗をこまめに確認するのも大切です。期限直前に回答が集中すると、内容を十分に検討できないまま比較することになります。
比較表では価格以外も並べる
比較表には価格だけでなく、納期、品質、サポート体制、追加費用の有無を並べます。安い見積もりほど、その根拠と実績を確認します。
並べた項目は点数化するなどして、選定理由を後から説明できる形で残します。発注の意思決定に透明性を持たせることが、結果として取引先との信頼につながります。
見積もりが出そろったら、金額の差だけでなく、差が生まれた理由も確認します。安すぎる見積もりには、仕様の読み違いや追加費用の見落としが隠れている場合があります。
やってはいけない4つの行為
1つ目は、義理で見積もりを取るだけのいただき見積もりです。発注先を決めた後で相見積もりを取ると、付き合いだけを求めた行為になり、信頼を損ないます。
2つ目は、他社の見積もり額をそのまま伝えて値下げを迫ることです。3つ目は、見積もり合わせで受注者を事前に決めることで、過去には受注調整が独占禁止法違反として排除措置命令の対象になりました。
4つ目は、協議を経ずに取引価格を据え置くことです。発注者側のこうした行為は、優越的地位の濫用として問題になるおそれがあります。受注者からは、すぐに他社に相見積もりを取られて切り替えられるおそれがある、という声も上がっています。
取引条件の見直しは、3月と9月の価格交渉促進月間のような交渉の機会を捉えると、双方にとって納得感のある進め方になります。相見積もりの依頼も、こうした時期に合わせると検討の時間を確保してもらいやすくなります。

最後に: 比較の先にある取引関係
相見積もりは、発注先を選ぶためだけの作業ではありません。価格が妥当かを見極め、相手との関係を続けるかどうかを判断する材料になります。
手順を踏んで比較し、不採用となった会社にも丁寧に連絡する。その積み重ねが、次の発注でも気持ちよく見積もりを出してもらえる関係をつくります。
比較の結果を記録に残しておけば、次の見積もり依頼で前回との違いを確認できます。相見積もりは一度きりの作業ではなく、繰り返すことで精度が上がります。
