荷物も仕事もある。それでも運送会社が倒れる。2025年度の人手不足倒産は441件で、3年連続の過去最多になりました。

この記事では、帝国データバンクと国土交通省の公開資料から、運送業に何が起きているのかを整理します。人手不足と燃料高という2つの負担が、会社の体力をどう削っているのかを追います。

人手不足倒産の推移(2025年度は441件で過去最多)

人手不足倒産は2025年度に441件

帝国データバンクによると、2025年度の人手不足倒産は前年度(350件)の約1.3倍にあたる441件でした。年度ベースで初めて400件を超え、3年連続で過去最多を更新しています。

出典: 帝国データバンク『人手不足倒産の動向調査(2025年度)』p.1(https://www.tdb.co.jp/report/economic/20260409-laborshortage-br25fy, 閲覧日2026-09-09)

同じ調査では、従業員や幹部の退職を原因とする従業員退職型の倒産が118件となり、こちらも過去最多を更新しました。会社を支える人が抜けることが、そのまま事業停止につながっています。

道路貨物運送業は55件で最多

業種別に見ると、ドライバー不足や高齢化が深刻な道路貨物運送業が55件で最も多くなりました。老人福祉事業の22件、飲食店の21件、労働者派遣業の12件が続き、いずれも業種別の過去最多です。

出典: 帝国データバンク『人手不足倒産の動向調査(2025年度)』p.1(https://www.tdb.co.jp/report/economic/20260409-laborshortage-br25fy, 閲覧日2026-09-09)

2026年上半期も同じ構図が続きます。人手不足倒産は227件で5年連続の過去最多となり、業種別では建設業の65件に次いで運輸・通信業が38件でした。

出典: 帝国データバンク『倒産集計 2026年上半期報(1月〜6月)』p.1(https://www.tdb.co.jp/report/bankruptcy/aggregation/20260708-bankruptcyh12026, 閲覧日2026-09-09)

2026年上半期の人手不足倒産227件のうち、従業員10人未満の会社が176件で77.5%を占めました。資本の薄い小規模事業者ほど、人が抜けた穴を埋められません。

運送業を直撃する人手不足の構造(退職・採用難・賃上げ競争)

従業員退職型倒産118件の衝撃

帝国データバンクは、賃金水準の高い他社へ人材が流出する例を報告しています。求めるスキルを持つ人材の応募が少なく、応募があっても他社に取られるという声が調査で上がりました。

中小の運送会社にとって、賃上げは簡単ではありません。燃料費や車両費が先に上がる中で人件費を積み増せば、利益が消えます。人を残すための原資が、そもそも足りていないのです。

2026年7月の調査では、運輸・倉庫で正社員が足りないと答えた企業は65.6%に達しました。建設の66.0%、金融の67.1%と並ぶ高さで、人手不足は一過性ではありません。

出典: 帝国データバンク『人手不足に対する企業の動向調査(2026年7月)』p.1(https://www.tdb.co.jp/report/economic/20260817-laborshortage202607, 閲覧日2026-09-09)

燃料高と運賃交渉の現在地を追う

2026年3月、中東情勢の緊迫化で原油価格が急騰し、燃料費や物流費が押し上げられました。帝国データバンクの景気動向調査では、この月の運輸・倉庫業の悪化幅が過去3番目に大きくなっています。

出典: 帝国データバンク『倒産集計 2026年3月報』p.1(https://www.tdb.co.jp/report/bankruptcy/aggregation/20260408-bankruptcy202603, 閲覧日2026-09-09)

コストが上がっても、運賃をすぐに上げられるとは限りません。荷主との交渉には時間がかかり、その間の赤字は運送会社が抱えます。運賃の決定権が荷主側にある取引構造が、退出を早めている面もあります。

燃料高が運送会社の利益を削る流れ(原油高・燃料費・運賃転嫁の遅れ)

国土交通省も動く物流の政策

国も手をこまねいているわけではありません。2025年6月に公布されたトラック適正化二法では、2026年4月から違法な白トラを利用する荷主への規制や、委託段階を2次までに抑える努力義務が始まりました。あわせて、違法な白トラの利用が疑われる荷主への是正指導を行うトラック・物流Gメンも体制を広げます。

出典: 国土交通省『トラック適正化二法について』p.1(https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_mn4_000019.html, 閲覧日2026-09-09)

公布から3年以内の項目には、トラック事業者の許可更新制度の導入も含まれています。行政処分や安全面の問題が、事業の継続に直結する仕組みに変わります。

公布から3年以内には、国土交通大臣が定める適正原価を下回る運賃を制限する仕組みも予定されています。運賃の底上げは、運送会社が人と車を維持するための前提になりつつあります。

最後に: 運賃を上げる以外の道

運送業の倒産は、荷物が減ったから起きているのではありません。運ぶ人が足りず、その人を支える運賃が足りないことが原因です。

競合の採用条件や運賃の動き、荷主の調達方針の変化は、決算より早く表れます。取引先と同業の変化を定点で見ておくことが、受注を続けるための備えになります。