2022年1月4日、ブラックベリーの旧OS向けサービスが停止しました。対象端末は電話やメッセージ、緊急通報まで使えなくなり、スマホ黎明期の象徴は静かに幕を閉じます。

かつて大統領や経営者が愛用した端末のシェアは、ほぼゼロまで落ちました。キーボードという武器を持ちながら、なぜ勝負に負けたのかを追います。

ブラックベリーの盛衰(2009年のピークから2022年のサービス停止まで)

全米で支持されたキーボードの強み

ブラックベリーは2003年ごろに発売されたメール端末で、物理キーボードの打ちやすさが武器でした。画面を見ずに打てる点が、法人利用者に支持されます。

2009年から2010年ごろのピークには、世界のスマートフォン市場で約20パーセントを握りました。年間販売台数は5000万台を超えています。

出典: The Guardian『BlackBerry signals end of an era as it prepares to pull plug on classic phones』p.1(https://www.theguardian.com/technology/2022/jan/03/blackberry-discontinue-service-classic, 閲覧日2026-05-20)

2007年のiPhoneをどう見ていたか

2007年1月にiPhoneが発表された当時、ブラックベリーは急成長の真っただ中でした。社内では、脅威と見なす声は少数派でした。

創業者のマイク・ラザリディスは、ガラス越しのタッチ入力に反対していました。物理的な手応えのないキーボードを快く思っていなかったと報じられています。

出典: The Wall Street Journal『Behind the Rise and Fall of BlackBerry』p.1(https://www.wsj.com/articles/behind-the-rise-and-fall-of-blackberry-1432311912, 閲覧日2026-05-20)

側近のラリー・コニーは、当時のiPhoneについて「安全ではなく、電池の減りが速く、キーボードもひどい」と評価しました。この証言は2015年刊行の著書で明らかになっています。

出典: Macworld『How the iPhone killed Blackberry (and why it didn't have to happen)』p.1(https://www.macworld.com/article/562752/blackberry-devices-software-obsolete-iphone.html, 閲覧日2026-05-20)

タッチ画面への対応が遅れた理由

2007年6月、通信大手ベライゾンはBlackBerryにタッチ画面の「iPhoneキラー」開発を打診しました。しかし結果として生まれたStormは、操作の重さから不評に終わります。

出典: The Globe and Mail『How BlackBerry blew it: The inside story』p.1(https://www.theglobeandmail.com/report-on-business/the-inside-story-of-why-blackberry-is-failing/article14563602, 閲覧日2026-05-20)

Stormと後継機は売れず、反撃は後手に回りました。タッチ操作に合わせたOSとアプリがそろっていなかったためです。

キーボードを残したまま売却交渉へ

2013年1月、同社はBlackBerry 10と全面タッチのZ10を発売します。ラザリディスは取締役会でキーボード端末を先に出すべきだと主張しましたが、受け入れられませんでした。

最終的にキーボード付きのQ10はZ10の後に回されました。市場はすでにタッチ画面へ移っており、Z10は期待したほど売れません。

アナリストは「タッチ画面が欲しい人はすでに他社へ移った」と指摘しました。キーボード支持層と新規顧客のどちらも取り込めない結果になります。

キーボードへの固執が生んだ3つの遅れ(Storm不評・Z10後手・アプリ不足)

ハード終了と2022年のサービス停止

2016年9月、ブラックベリーは自社でのハード開発を終了し、端末は他社に委託すると発表しました。同年12月には中国のTCLとブランドライセンス契約を結びます。

出典: Ars Technica『Goodbye QWERTY: BlackBerry stops making hardware』p.1(https://arstechnica.com/gadgets/2016/09/rip-blackberry-hardware-company-pivots-to-software, 閲覧日2026-05-20)

TCL製端末も2020年8月で販売を終えました。その後、旧OS向けサービスの終了が2022年1月4日に実施され、通話やメッセージが使えなくなりました。

出典: CBC News『Blackberry ends agreement with Chinese-manufacturer TCL to make, sell phones』p.1(https://www.cbc.ca/news/canada/kitchener-waterloo/blackberry-waterloo-tcl-phone-mobile-1.5450031, 閲覧日2026-05-20)

端末販売のピークは2011年で約5200万台でした。2016年10月から12月期のシェアは0.0パーセント、販売台数は約20万台まで落ちています。

出典: CNBC『Chart of the day: The BlackBerry's fall to 0.0 percent market share』p.1(https://www.cnbc.com/2017/02/27/chart-of-the-day-the-blackberrys-fall-to-00-percent-market-share.html, 閲覧日2026-05-20)

顧客の期待を読み違えた代償

ブラックベリーの失敗は、キーボードが不要になったからではありません。キーボードを求める顧客を守りながら、新しい顧客層を取り込む順序を誤りました。

一方で、キーボードへの需要は今も残っています。同社はキーボードの特許を他社へライセンスする道を選びました。武器を捨てるのではなく、使い道を変えたのです。

2007年から2022年までの対応の推移(タッチ対応の遅れとハード終了)

最後に: 定番の強みが弱みに変わる時

ブラックベリーのキーボードは、長く愛された定番の強みでした。しかし市場の前提が変わると、同じ強みが変化への足かせに変わります。

競合を見張る目的は、その変化の瞬間を早く捉えることです。自社と競合の前提がいつ崩れるかを、発表と数字の両方から確かめておきましょう。