2018年3月14日、米トイザらスは米国内の全735店を売却または閉鎖し、事業を清算すると従業員に伝えました。世界最大級の玩具専門チェーンが、店を畳む決断でした。

この記事では、破綻までの流れを公開資料でたどります。買収で膨らんだ負債、ECと価格競争への対応遅れ、日本事業との明暗という3つの論点から整理します。

トイザらス破綻の主な流れ(2005年の買収から2018年の清算まで)

トイザらスは世界最大の玩具販売チェーンだった

同社の歴史は戦後のベビー家具店から始まりました。玩具の大型専門店として成長し、2017年時点でも米国の玩具売上の約5分の1を占めていたとNPRは伝えています。

売上の4分の3は年末商戦に集中していました。季節型のビジネスであることが、経営難の局面で資金繰りを厳しくします。

NPRの取材に応じたアナリストは、店舗の客足が落ち、子どもがゲームや動画に時間を使うようになったと指摘しています。玩具を探しに行く場所という前提が、静かに崩れていました。

出典: NPR『Game Over For Toys R Us: Chain Going Out Of Business』p.1(https://www.npr.org/sections/thetwo-way/2018/03/14/592882488/game-over-for-toys-r-us-chain-going-out-of-business, 閲覧日2026-09-05)

2005年の買収が約50億ドルの負債を生んだ

2005年、投資ファンドのベインキャピタルとKKR、不動産投資会社のバナド・リアルティがトイザらスを買収しました。買収資金の多くを会社の負債として背負わせたため、約50億ドルの負債と利息が残ります。

負債は新しい投資の余力を奪いました。店舗の改装やECの強化に十分な資金を回せず、競合との差は広がっていきます。

Amazonとの提携が競合を育てた

2000年、トイザらスは自社の通販をAmazonに委託する提携を結びました。1999年の年末商戦で配送が遅れた反省からでしたが、結果的に最大の競合へ客とデータを渡す形になります。

2004年、トイザらスは契約違反を訴えました。2009年にはAmazonが5100万ドルを支払うことで和解し、提携は正式に終わります。

この間にAmazonは玩具とベビー用品の部門を自前で育てました。和解が成立した頃には、ネットで玩具を買う習慣はAmazon側に定着していました。

和解した2009年、トイザらスはeToysなど通販サイトの買収で巻き返しを図っていました。しかし、ネット玩具販売の主導権はすでにAmazon側にありました。

出典: CBS News『Amazon Settles Suit with Toys "R" Us for $51 Million』p.1(https://www.cbsnews.com/news/amazon-settles-suit-with-toys-r-us-for-51-million, 閲覧日2026-09-05)

2018年3月、735店の清算が決まった

2017年9月、トイザらスは連邦破産法11条を申請します。再建の一環として2018年1月に約200店の閉鎖を発表しましたが、年末商戦の不振で再建は行き詰まります。

2018年3月、全米735店の清算が決まりました。オンライン販売への切り替えに間に合わなかったのです。

清算で約3万人が職を失う見通しでした。未払いの相手には玩具メーカーも含まれ、マテルには1億3500万ドル超、ハズブロには5900万ドルが請求されています。

ウォルマートやターゲットとの価格競争も重荷でした。店頭で触って選べる体験は強みでしたが、価格と利便性の前では決め手にならなくなっていました。

店舗の広さと豊富な在庫は、かつては最大の武器でした。ネット販売では同じ広さがコストになり、有利と不利が入れ替わります。

トイザらスが失った3つの競争力(負債・EC・価格)

日本トイザらスはなぜ残ったのか

日本トイザらスは、米国法人とは会計が分かれた別会社でした。米国での清算発表後も、国内店舗は通常どおり営業を続けると説明しています。

2018年11月にはアジア事業の株式が売却され、香港の小売り大手ファン・リテーリングが大株主になりました。米国法人が持っていた約85%分が対象で、売却額は10億ドル規模と伝えられています。

出典: M&A総合研究所『トイザらスアジア事業売却へ!売却額は1,000億円?買収したのは誰?』p.1(https://masouken.com/%E3%83%88%E3%82%A4%E3%82%B6%E3%82%89%E3%82%B9%E3%82%A2%E3%82%B8%E3%82%A2%E5%A3%B2%E5%8D%B4, 閲覧日2026-09-05)

米国と日本で分かれた明暗(清算と存続)

最後に: 変化は発表より先に数字に出る

トイザらスの破綻は、負債と競争環境という2つの変化が同時に進んだ結果でした。決算の数字が悪化してからでは、打てる手は限られます。

競合の投資や価格の動きは、発表よりも早く現場の数字に表れます。定点で見続けることが、前提の変化に気づく第一歩になります。