2020年5月15日、東証一部に上場していたレナウンが民事再生法の適用を申請しました。新型コロナの感染拡大後、国内の上場企業が経営破綻するのは初めてでした。

原因はコロナだけではありません。この記事では、公開資料からレナウンが変われなかった理由を読み解きます。

レナウンの主な歩み(1902年の創業から2024年の社名復活まで)

レナウンは何を作っていた会社か

レナウンは1902年創業の老舗アパレルです。CMソングをきっかけに知名度を高め、ダーバンやアクアスキュータムなど30以上のブランドを展開しました。高度経済成長とバブルの追い風を受け、世界最大規模のアパレル企業に成長します。

出典: 東京商工リサーチ『法人としての「レナウン」が消滅へ』p.1(https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1198748_1527.html, 閲覧日2026-08-15)

ピーク時にはアパレル業界を席巻し、日本の衣料文化を作った会社の一つでした。百貨店の売り場に強いブランドを持ち、衣料品の流通を支える立場にありました。

衣料品の買い方が大きく変わった

転機は、売り場の変化でした。ユニクロやしまむらのように、企画から販売までを自社で手がけるSPAが伸び、百貨店に客が来なくなる時代に入ります。

レナウンは百貨店やショッピングモールを通した代理店型の販売を続けました。消費者の購買行動が変わっても、販売チャネルを切り替えられなかったのです。つまり、客が買い物をする場所が変わったのに、売る場所を変えるのが遅れました。百貨店では来店して試着して買うのが当たり前でしたが、ネットと専門店はその前提を崩しました。得意としてきた50〜60代向けのブランドも、若い世代には響きにくくなっていました。

出典: 日本経済新聞『レナウン破綻、従業員が告白「原因はコロナじゃない」』p.1(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59275190Z10C20A5000000, 閲覧日2026-08-15)

EC化率3.2%が示すもの

数字は変化の大きさを映します。2019年12月期のレナウンは、売上の55.4%を百貨店が占めていました。一方、ネット通販のEC化率は3.2%です。

数字で見るレナウン(百貨店依存55.4%・EC化率3.2%・負債138億円)

競合のオンワードホールディングスは、同じ時期にEC化率13%まで進んでいました。10ポイント近い差は、そのまま売り場への投資の差になっていました。EC売上は計画にも届かず、2019年12月期の実績は計画の85%にとどまっています。数字は結果ですが、その差が開いたのは一つの決断の積み重ねでした。

出典: 日本ネット経済新聞『レナウン経営破たんの一因はEC化の遅れ?』p.1(https://modify.netkeizai.com/articles/detail/822, 閲覧日2026-08-15)

親会社との対立で止まった改革

2010年、レナウンは中国の繊維大手・山東如意科技集団の傘下に入ります。しかし業績は戻りませんでした。2019年12月期には67億円の最終赤字を計上します。

追い打ちになったのが、親会社グループからの売掛金の回収難です。約53億円の貸倒引当金を計上し、親会社との対立が深まりました。抜本的な事業改革を進められないまま、時間だけが過ぎていきます。

レナウンが変われなかった4つの理由(SPAへの後れ・ECの遅れ・親会社との対立・若年層ブランドの不在)

破産後もブランドは生き残った

2020年9月、ダーバンとアクアスキュータムの事業はオッジ・インターナショナルへ譲渡されました。同年11月27日、レナウンは破産開始決定を受けます。

ブランドは生き残り、会社だけが消えました。会社がなくなっても、ブランドと雇用の一部は事業譲渡を通じて残りました。2024年には破産手続きが終結し、レナウンは法人として消滅します。申請時の負債は約138億円でした。

出典: 東京商工リサーチ『法人としての「レナウン」が消滅へ』p.1(https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1198748_1527.html, 閲覧日2026-08-15)

そして2024年11月、事業を引き継いだオッジ・インターナショナルが「レナウン株式会社」に社名を変更しました。名門の名前は、別の会社として復活しています。

出典: ツギノジダイ『オッジ・インターナショナル、「レナウン株式会社」に11月に社名変更』p.1(https://smbiz.asahi.com/article/15410925, 閲覧日2026-08-15)

最後に: 数字は変化の結果を語る

百貨店依存55.4%、EC化率3.2%。この数字は、時代の変化に対する答えが決まる前に、答え合わせをしていたようなものです。変化に気づいた時には、すでに売り場の主役は入れ替わっていました。変化は、競合の数字と売り場に先に表れます。

自社の数字と競合の数字を並べて見ると、変化の方向が早く分かります。派手なニュースを待つより、静かな変化を拾う仕組みが、次の判断を助けます。