2025年8月期、ユニクロの国内売上高がアパレル企業として初めて1兆円を超えた。その裏側で、中堅アパレル企業の倒産や閉店、ブランド終了が相次いでいる。同じ業界で明暗が分かれている。

この記事では、SPAの拡大、価格競争、円安、EC化という4つの論点から、アパレル倒産が続く理由を公開データで読み解く。数字の裏にある構造を一緒に見ていこう。

アパレル倒産をめぐる4つの数字

SPAの1兆円と中小の撤退

日経BizGateは2025年12月、国内ユニクロ事業の売上高が2025年8月期に1兆円を超えたと報じた。同時に、業界では名前の知られた中堅アパレルの倒産が続き、倒産や廃業は小規模な事業者に目立つと指摘している。

出典: 日経BizGate『落日のアパレル、倒産・閉店高止まり SHEINや古着の波』p.1(https://bizgate.nikkei.com/article/DGXZQOLM2614W026112025000000, 閲覧日2026-05-16)

ファーストリテイリングなど上位企業は好調で、需要は上位に集まっている。残る中小は値引きでしか客を呼べず、利益を削り合う展開になりやすい。

SPAは自社で需要を読んで生産量を決めるため、売れ残りを抑えやすい。その分、読みが外れると在庫と値引きが一気に膨らむリスクも抱える。

衣料品は生活必需品の値上げが続くなかで買い控えも起きている。日経BizGateは、家計に占めるファッション支出の割合が下がったと指摘した。

円安が仕入れコストを押し上げる

帝国データバンクの調査では、2025年度の円安倒産69件のうち、繊維・アパレル関連が25件と最も目立った。繊維原料や衣料品は輸入への依存度が高く、円安が仕入れ価格に直撃する。

出典: 帝国データバンク『「円安倒産」動向調査(2026年2月)』p.1(https://www.tdb.co.jp/report/economic/20260303-enyasu2602, 閲覧日2026-05-16)

具体的な事例も残っている。レディースアパレルのズーティーは2025年6月に破産し、靴下製造の三ッ星靴下も2025年12月に破産した。いずれも円安による仕入れ価格の上昇が収益を圧迫した。

円安倒産は2022年6月以降、45カ月連続で発生している。輸入依存の高い業種では、為替が収益の前提を変え続けている。

価格競争で値上げがしにくい構造

帝国データバンクの2024年度集計では、繊維工業・繊維製品製造業の倒産が前年度の64件から104件へ増えた。原材料価格の高騰が収益を圧迫した形だ。

出典: 帝国データバンク『倒産集計 2024年度報(2024年4月-2025年3月)』p.1(https://www.tdb.co.jp/report/bankruptcy/aggregation/g2-5yfk9w, 閲覧日2026-05-16)

価格を上げられればいいが、低価格帯にはSHEINや古着、ワークマンのような強力な選択肢がある。日経BizGateも、低価格帯のニーズが奪われていると指摘した。

値上げが浸透しにくい背景には、消費者の節約志向もある。実店舗のセールも集客力を落とし、定価販売のハードルは上がった。

閉店と休廃業は統計に出にくい

倒産件数だけでは、アパレルの退出は見えにくい。日経BizGateの取材に応じた帝国データバンクの担当者は、閉店や廃業などの静かな退場は統計に表れる数字より多いと見込まれると話した。

実際、倒産ではなくブランド休止や事業売却という形で表に出るケースも多い。フォーエバー21の日本撤退のように、企業体の倒産を伴わない撤退は件数に数えられない。

店舗の閉鎖は決算短信やブランドの告知で確認できる。公式サイトの店舗一覧が減る動きは、発表より早いこともある。

中小アパレルを襲う4つの波

在庫とEC化が生死を分ける

経済産業省の調査では、2024年の衣類・服装雑貨等のBtoC-EC市場は2兆7980億円だった。実店舗の売り場とネットの在庫をどう共有するかが、売れ残りを左右する。

出典: 経済産業省『令和6年度電子商取引に関する市場調査の結果』p.1(https://www.meti.go.jp/press/2025/08/20250826005/20250826005.html, 閲覧日2026-05-16)

東京商工リサーチの2025年度集計でも、織物・衣服・身の回り品小売業は倒産が増加した業種に挙がった。売り場も通販も持つ企業ほど、在庫と値引きの管理が難しくなる。

出典: 東京商工リサーチ『2025年度(令和7年度)の全国企業倒産1万505件』p.1(https://www.tsr-net.co.jp/news/status/detail/1202724_1610.html, 閲覧日2026-05-16)

在庫を抱えれば倉庫代がかかり、処分すれば値引きが利益を消す。需要予測と値下げのタイミングが、そのまま損益に表れる。

SPAが強い3つの理由

最後に: 二極化をどう見張るか

アパレルの倒産は、業界全体の不況というより、競争の勝ち負けが先鋭化した結果である。SPA、低価格EC、古着、新顔ブランドが同じ客を奪い合っている。

競合の値下げや新ブランドの投入は、決算の発表を待たずに店頭とサイトに現れる。価格、在庫、出店の変化を定点で追うことが、撤退の兆しを早くつかむ第一歩になる。