町工場の倒産は、赤字だけが原因ではない。2025年度の後継者難倒産は461件に達し、調査を始めた2013年度以降で最多を記録した。
この記事では、東京商工リサーチと帝国データバンクの調査から、製造業と町工場が抱える2つの負担を整理する。受注を巡る競争と、経営者の高齢化による後継者不足を追う。

後継者難倒産は461件で最多
東京商工リサーチによると、2025年度の後継者難倒産は前年度比1.3%増の461件でした。2年ぶりに前年度を上回り、2013年度の調査開始以降で最多です。5年連続で400件台が続いています。
要因別では代表者の死亡が219件、体調不良が172件で、この2つだけで全体の84.8%を占めました。資本金1000万円未満の会社が293件と6割を超え、小さな会社ほど経営者の高齢化が事業の存続に直結しています。
倒産の形態は破産が437件で、全体の94.7%を占めました。再建型の手続きではなく、事業を終える形の倒産がほとんどです。
製造業でも後継者難は74件
産業別に見ると、サービス業他が119件で最も多く、建設業の96件、製造業の74件が続きます。製造業は前年から3.8%減ったものの、依然として上位に入っています。
帝国データバンクの集計でも、2025年の後継者難倒産は503件でした。3年連続で500件を超えており、業種別では建設業の120件が最多です。

後継者不在率は50.1%まで低下
帝国データバンクが全国約27万社を調べたところ、2025年の後継者不在率は50.1%でした。前年から2.0ポイント下がり、7年連続で改善しています。後継者がいない、または未定の企業は13.8万社です。
ただし、改善の恩恵はすべての会社に届いているわけではありません。大企業の不在率が24.9%なのに対し、中小企業は51.2%、小規模企業は57.3%で、規模による差が残っています。
都道府県別の差も大きく、最も低い三重県は33.9%、最も高い秋田県は73.7%でした。地域の産業構造と人口動態が、事業承継の難しさに表れています。
業種別では、最も高い建設業でも57.3%で、全業種が60%を下回りました。製造業を含め、業種を問わず後継者問題は経営課題になっています。
物価高が町工場を直撃している
受注を巡る環境も厳しさを増しています。帝国データバンクによると、2025年の物価高倒産は前年比1.7%増の949件で、2年連続の過去最多を更新しました。業種別では建設業の240件に次いで、製造業が174件で3番目に多くなっています。
2026年上半期も同じ傾向です。物価高倒産は556件で過去最多を大幅に更新し、製造業が103件を占めました。原材料や燃料費の上昇分を取引価格に載せられないまま、資金繰りが悪化する構図が続いています。

小規模企業ほど後継者がいない
後継者不在率を取引金融機関別に見ると、メガバンクが44.2%、政府系金融機関が42.3%だったのに対し、信用金庫は57.9%、信用組合は56.2%でした。地域の金融機関が支える小規模事業者に、後継者問題が集中しています。
帝国データバンクは、M&Aや事業承継の支援が広がったことで全体の不在率は下がったと分析しています。一方で、第三者への譲渡を避ける経営者も多く、廃業という選択がなくならないことも指摘しています。
最後に: 事業を続けるための準備
後継者不在率は過去最低まで下がりました。それでも、小規模企業では2社に1社以上の後継者が決まっていません。数字の改善だけを見ていると、足元の変化を見落とします。
同業の廃業や取引先の後継者問題は、受注や与信の変化として自社に跳ね返ってきます。競合と取引先の動きを定点で見ることが、事業を続けるための準備になります。
