ソフトウェアはもうかる、という前提が揺れている。2026年上半期、情報サービス業の倒産は166件に達し、過去10年で最多を更新した。
この記事では、東京商工リサーチと帝国データバンクの調査から、ソフトウェアとSaaSの競争環境がどう変わったのかを整理する。値下げ競争の限界と、生成AIが突きつける問いを追う。

情報サービス業の倒産は166件
東京商工リサーチによると、2026年上半期の情報サービス業の倒産は166件で、前年同期から18.5%増えました。負債1億円未満が147件で全体の88.5%を占め、従業員5人未満の会社が135件と81.3%に達しています。
地域別では関東が105件で63.2%を占め、近畿の30件、九州の14件が続きます。小規模な会社が集まる都市部から、先に淘汰が進んでいる形です。
小規模事業者に倒産が集中する
市場への参入は衰えていません。2025年の情報サービス業の新設法人数は1万1138件で、4年連続で1万社を超えました。一方で、同じ年の倒産276件と休廃業・解散3014件を合わせると3290件に達し、前年より20.8%増えています。
入る会社と出る会社が同時に増える新陳代謝は、競争が激しい証拠です。会社の数が増えれば、同じ仕事を巡る価格競争も厳しくなります。

値下げ競争が効かなくなった
事態を変えたのが、ノーコードやローコードツール、生成AIの普及です。簡単なコンテンツ制作や開発は発注側が内製できるようになり、価格の安さだけで受注してきた会社の仕事が減りました。
東京商工リサーチは、大手や中堅が待遇を上げて高度な人材を確保し、大型案件で優位に立つ半面、下請けや小規模案件で食いつなぐ会社は利益を確保しにくくなったと分析しています。同じ業界の中で、受注できる案件の大きさが二極化しているのです。
人件費高騰が利益を削る構造
帝国データバンクの調査でも、同じ傾向が確認できます。2025年度のソフトウェア業の倒産は2月までで195件に達し、通年で220件だった前年度と並ぶ過去10年最多ペースです。負債1億円未満が84.6%を占めました。
背景にあるのは人手不足です。情報サービス業で正社員が足りないと答えた企業は2026年1月時点で69.2%に達しました。2025年の所定内給与は月38万3755円と、全業種平均の26万7532円を大きく上回り、コストが構造的に重くなっています。
受託開発では多層の下請け構造が価格転嫁を難しくし、パッケージソフトは回収に時間がかかります。値下げで受注を取っても、人件費を賄えなければ意味がない時代です。
帝国データバンクは、ソフトウェア業界の受注環境そのものは良好な状態が続くとみています。それでも倒産が減らないのは、仕事の取り方と人材の確保で会社の間の差が開いているためです。

AIでSaaSは死ぬのかを考える
生成AIの進化を受けて「AIでSaaSは不要になる」という言説も広がっています。しかし、実務の現場はそこまで単純ではありません。
同記事は理由として、障害や法務の責任を引き受ける主体が必要であること、要件定義を担える人材が不足していること、法制度の変更に追従するドメイン知識と監査対応の壁が低くならないことを挙げます。AIは作業を代替できても、責任を引き受けられません。
最後に: 価格以外で戦う道はある
値下げで仕事を取る戦い方は、AIと内製化の前で効き目を失いつつあります。残るのは、専門性と責任を引き受ける力です。
競合の値付けや採用条件、請負の構造は、決算より早く変化のサインを出します。同業の動きを定点で見ることが、自分の立ち位置を確かめる材料になります。
