美容室の数は増え続けている。厚生労働省の統計では、2024年3月末の美容所は27万4070施設で、従業美容師も57万9768人に達した。一方で、美容室の倒産は2年連続で過去最多を更新した。
この記事では、廃業率という単一の統計が存在しない理由を確認しながら、施設数、倒産、赤字経営のデータを組み合わせて低価格競争の実態を読む。美容室をめぐる数字を正面から見ていこう。

27万施設まで増えた美容所の現実
厚生労働省の美容業概要によると、2024年3月末の美容所数は27万4070施設で、前年度比1.5%増だった。従業美容師数は57万9768人で、前年より7958人増えている。
美容所は27万施設を超え、チェーンから個人店まで同じ商圏で客を奪い合う。需要が大きく増えないなかで店舗だけが増えれば、1店あたりの客数は薄まる。
東京商工リサーチが厚生労働省の令和6年度衛生行政報告例をもとに報じたところでは、2024年度末の美容所は27万7752施設に達した。前年度末から3682施設、率にして1.3%増えている。
美容師は増えても売上は伸びない
帝国データバンクの調査では、美容室倒産のうち約3割の事業者が赤字経営だった。減益の事業者も26.0%に達し、3年連続で増えている。
客単価を上げられないまま人件費や資材費が上がれば、利益は残らない。利用客の来店頻度が落ちた店では、値下げクーポンに頼る悪循環に入りやすい。
帝国データバンクの調査でも、口コミやSNSによる集客が効く一方、利益を減らす事業者が増えている。売上より先にコストが伸びる構図だ。
倒産は3年連続で増えている
帝国データバンクによると、2025年の美容室倒産は235件で、前年の215件を上回って2年連続の過去最多となった。2025年1月から8月の時点で157件と、すでに前年同期の139件を超えていた。
東京商工リサーチの集計でも、2025年の美容業の倒産は120件と前年比5.2%増で、過去20年で最多だった。原因の8割超が販売不振で、負債1億円未満の小規模倒産が9割を占める。
2025年の美容業倒産では、破産が111件と全体の92.5%を占めた。再建型の手続きに進まず、事業を畳むケースがほとんどだ。
低価格サロンが利益を削る仕組み
美容室業界では、大手チェーンや低価格カット専門店、個人サロンの参入が続いてきた。帝国データバンクは、値下げ競争が起きていると指摘する。
同じ技術でも、駅前の一等地と郊外では家賃が違う。低価格を売りにする店が増えるほど、価格帯をそろえる圧力が全体に広がる。
カットの低価格店や予約サイトの比較も、価格の透明性を高めた。客は複数の店を試しやすく、固定客を囲い込みにくくなっている。

人手不足とフリーランス化の波
帝国データバンクは、美容師のフリーランス化が進み、スキルや知名度のあるスタイリストの採用が難しくなっていると報告した。2025年に発生した美容室倒産のうち、人手不足が直接の要因となったものは9件に達した。
低賃金と長時間労働の改善を求めるスタッフの流出も続く。人を残すための賃上げは、そのまま固定費の増加になる。
フリーランスのスタイリストは、店舗に雇われずに席を借りて働く。固定費を人件費から席料に置き換える動きは、新人を育てる余力を店側から奪う。

最後に: 数字で見る美容室の淘汰
美容室の廃業率という単一の統計はない。しかし、施設数が増え続ける一方で倒産と赤字経営が増えている事実は、供給過剰が静かに解消に向かっていることを示す。
競合の出店、価格改定、求人条件は、いずれもホームページや求人票に先に表れる。近隣サロンの変化を定点で見ることが、自分の店の立ち位置を確かめる材料になる。
廃業した店は統計に残らず、気づけば消えていることが多い。求人票の枚数や予約枠の空き方は、店の余力を見る手がかりになる。
