中小企業のDXは、もう常識になったのだろうか。IPAの調査では、何らかの形でDXに取り組む企業は全体の77.8%に達している。
一方で、従業員100人以下の企業に限ると46.8%にとどまる。この記事では複数の調査を並べ、どこまで進んだのかを確かめる。

中小企業のDXはどこまで進んだか
中小企業庁の2025年版中小企業白書は、デジタル化の取組段階を4つに分けて分析している。紙や口頭が中心の最も低い段階にある事業者の割合は、前回調査より大きく減った。
ただし白書は、サンプル調査であり調査間で母集団が異なるため、割合を単純には比較できないと注記している。前進はしているが、デジタル化できていない層も残る。
4つの段階は、紙と口頭が中心の段階、ツールを使う段階、業務効率化やデータ分析の段階、ビジネスモデルの変革に取り組む段階に分かれている。段階が上がるほど、売上やコスト、人材面で効果を感じる割合も高くなる。
調査データで見るDXの現在地
日本政策金融公庫が2025年12月に実施した調査では、DXに既に取り組む企業と検討中の企業を合わせて39.1%だった。前回調査の42.0%からほぼ横ばいである。
一方、取り組む予定はないと答えた企業は31.5%あった。取り組みが一部で進む一方、動けていない層が厚く残っている。
調査は全国の中小企業1,000社を対象にしている。DXに既に取り組む企業では、個別業務のデジタル化を進める割合が増えており、取り組みが次の段階へ進みつつある。
大企業と中小企業で開くDX格差

IPAのDX動向2025では、従業員1001人以上の企業で96.1%がDXに取り組むのに対し、100人以下では46.8%だった。2倍以上の差がある。
取り組む企業でも成果の実感は簡単ではない。設定した目的に対する成果が出ていると答えた日本企業は6割弱で、8割を超える米国とドイツを下回っている。
IPAの調査では、成果を測る指標の設定でも日本は出遅れている。指標を設定している企業は3割以下で、米国とドイツは8割以上だった。
DXが止まっている企業の理由
日本政策金融公庫の調査で課題の上位は、ITに関わる人材が足りない28.3%、予算の確保が難しい26.0%、DX推進に関わる人材が足りない25.6%だった。いずれも前回調査より増えている。
IPAの調査では、DXに取り組まない理由として自社がDXに取り組むメリットがわからないが最も多く、次に知識や情報の不足が続いた。人が足りないだけでなく、進め方が見えていない。
同公庫の調査では、支援ニーズとして研修制度やベンダー・ツール情報の提供が前回より増えた。自前で抱え込まず、外部の情報を求める動きが出ている。
AI活用は28.4%に増えた
同じ日本政策金融公庫の調査で、DXの具体的な取組としてAIの活用を挙げた企業は28.4%だった。前回の14.3%から14.1ポイント増えている。
文書の電子化やペーパーレス化は55.8%で最も多い。基本的なデジタル化と、AIという新しい道具の活用が同時に進んでいる。
遅れを取り戻すための3つの手順

第一歩は、自社の業務がどの段階にあるかを確認することだ。紙と口頭が中心なのか、ツールを使う段階なのかを区別する。
次に、足りないものが費用なのか人材なのかを特定する。そして、補助金や研修、外部の専門家など、使える支援を組み合わせる。
中小企業白書は、必要なところから小さく始めた事例を紹介している。すべてを一度に変える必要はない。
支援策としては、IT導入補助金や省力化投資補助金が用意されている。白書は、人手不足が深刻な建設業や小売業、宿泊・飲食サービス業でも活用が広がっているとしている。
最後に: 変化は比較で見える
数字を並べると、中小企業のDXは進んだ層と止まった層に分かれていることが見えてくる。全体の平均だけを見ていると、この差を見落とす。
取引先や競合がどこまでデジタル化しているかを知ることも、自社の現在地を測る材料になる。変化は比較することで見えてくる。
