取引先の経営が急に悪化する前に、兆候をつかむことはできるのか。帝国データバンクは、企業が1年以内に倒産する確率をG1からG10の10段階で示す倒産予測値を公表している。
2025年12月時点で、リスクが高いとされた企業は12万8220社にのぼる。この記事では、その中身を分解し、取引先を見るときの視点を整理する。

高リスク企業とは何を指すのか
倒産予測値は、倒産に関係が深い要素を統計モデルで分析し、1年以内に倒産する確率を10段階に分けた指標だ。このうちグレード8から10を高リスク企業と呼ぶ。
帝国データバンクは国内147万社について算出し、高リスク企業は全体の8.7%にあたる12万8220社だった。前年の12万6960社から1260社増え、4年ぶりに増加へ転じている。
12.8万社の内訳は小規模企業
従業員数別に見ると、10人未満が高リスク企業の80.1%を占める。5人未満が8万2057社、5人以上10人未満が2万681社だった。
売上高別では1億円未満が64.2%で最も多い。小規模な企業ほど外部環境の変化に弱く、物価高や人手不足の影響を吸収しきれずにリスクが高まっている。
業種を細かく見ると、高リスク企業数は職別工事業が1万4999社で最多、次いで総合工事業が1万1736社だった。建設業が上位2業種を占めている。
最多業種が製造業に入れ替わった
業種別では製造業が3万1035社で最多となり、前年から2464社、率にして8.6%増えた。2024年に最多だった建設業を抜き、順位が入れ替わっている。
背景には関税や円安による原材料価格の上昇があると同社は指摘する。コストの上昇分を価格に転嫁できずにいる中小の製造業で、リスクが顕在化している。
増加率が最も高かったのは木材・木製品製造業で24.7%増だった。繊維工業も21.2%増えており、同社は円安が収益を圧迫する要因になったと分析している。
出現率で見るリスクの高い業種

業種内に占める高リスク企業の割合を出現率で見ると、飲食店が43.0%で最も高い。次いで出版・印刷・同関連産業が41.7%、飲食料品小売業が39.8%と続く。皮革・同製品・毛皮製造業は37.3%、家具・装備品製造業は35.8%だった。
全体の出現率が8.7%であることを考えると、これらの業種は5倍近い水準だ。電子媒体への移行やリユース品の台頭など、構造的に需要が減っている業種ほどリスクが高い。
2025年6月時点の集計でも、出現率は出版・印刷・同関連産業が41.0%、飲食店が38.3%で上位だった。業種の傾向は半年を経ても変わっていない。

悪化と改善の差をどう読むか
1年間の変化を見ると、高リスクに悪化した企業は3万2177社、中低リスクに改善した企業は2万7503社だった。悪化が改善を4674社上回っている。
また、中低リスクの中で最もリスクが高いグレード7の企業は約10万社存在する。同社はこの層を、高リスクへ再転落する可能性を抱えた境界層として注意を促している。
同社によると、高リスク企業と中低リスク企業では従業員一人当たりの売上高に約1.4倍の差がある。高リスク企業は投資余力に乏しく、価格交渉力が弱まりやすいという。
取引先チェックの5つの視点
高リスク企業の公表データは、取引先を見直すきっかけになる。確認したいのは、業種の構造的なリスク、従業員数や売上高の規模、業歴、決算や登記の変化である。
もう一つ大切なのが定点観測だ。帝国データバンクも、市場や取引先の動向、需給の変化を丁寧に把握する体制が重要だとしている。
都道府県別では長野県の出現率が14.6%で最も高く、栃木県が13.6%、島根県が13.4%と続いた。地域の産業構造によってリスクの出方も変わる。
最後に: 小さな変化を定点で見る
倒産予測値は将来を断定するものではない。それでも12万8220社という数字は、リスクが特別な企業だけの話ではないことを示している。
取引先の変化を決算のたびに確認するだけでは遅い。日々の小さな変化を定点で見る仕組みが、取引の安全を守る第一歩になる。
