2024年の日本国内のBtoC-EC市場規模は26.1兆円だった。ネット通販は年々拡大しているように見える。しかし、同じ時期に小売業の倒産件数は増え続けている。
この記事では、公開統計を使ってネット通販の市場拡大とショップの淘汰が同時に進む理由を整理する。価格競争、送料、集客のどこで差がつくのかをデータで見ていこう。

26兆円市場でも倒産が増える理由
経済産業省の調査によると、2024年のBtoC-EC市場規模は26兆1225億円で、前年比5.1%増だった。物販系は15兆2194億円まで伸び、EC化率は9.78%に上がっている。
市場が伸びても、売上を伸ばせるのは一部の事業者だけだ。矢野経済研究所がECサイト運営事業者47社に聞いた調査では、好調とやや好調を合わせて68.0%だった一方、横ばいも19.1%あった。
EC化率は物販系で9.78%と、まだ1割程度だ。伸びしろがある一方、価格の比較が常に起きる市場でもある。
小売業の倒産は過去最多水準にある
帝国データバンクの集計では、2025年度の小売業倒産は2233件に達し、2000年度以降で最多となった。企業倒産全体も1万425件と4年連続で前年を上回り、2年連続で1万件を超えている。
目立つのは小規模な倒産だ。2025年度は負債5000万円未満の倒産が比較可能な2000年度以降で最多となり、体力の乏しい事業者から市場を去っている。
2025年の倒産全体では、飲食料品小売や飲食店の倒産も増えた。ネット通販に限らず、物販全体で価格とコストの戦いが起きている。

価格競争が利益を削る仕組み
ネット通販は価格の比較が簡単で、同じ商品なら安い店に客が集まりやすい。送料無料やポイント還元の原資は、ほかならぬ事業者の利益である。値引き合戦に参加するほど、利益率は下がっていく。
帝国データバンクの倒産集計によると、アパレルや日用品を輸入販売していた井上通商が2025年2月に破産し、負債は約41億7800万円だった。日刊工業新聞の記事では、ECモールへの出店で売り上げを伸ばした時期があったと報じられている。
送料と返品が重荷になる理由
ネット通販では、店舗と違って送料と返品コストがかかる。無料に見える送料も、実際には商品価格か販売手数料に織り込まれている。そして宅配運賃や資材価格が上がれば、その負担は事業者に残る。
矢野経済研究所の調査でも、EC事業者には集客力の強化や価格戦略の見直しが課題として指摘されている。広告を出しても売れなければ、費用だけが積み上がる。
返品率の高さも見逃せない。衣類などはサイズが合わない場合の返品が多く、返送料と再販の手間が利益を削る。
生き残るショップの共通点とは
勝ち残っているショップに共通するのは、価格以外の理由で選ばれることだ。専門品ぞろえ、独自ブランド、定期便のように、比較されにくい価値を作っている。
矢野経済研究所は、横ばいの事業者も一定数存在すると指摘する。集客と価格の見直しを先に進めた事業者から、成果が出ている。
コマースピックが報じた帝国データバンクの発表では、2026年7月の倒産で小売業が単月として2000年以降で最多の234件になった。市場全体が縮むときではなく、拡大が鈍るときに淘汰が進む点は、ネット通販も同じだ。

最後に: 数字で見るネット通販の現在地
ネット通販の市場は26兆円を超え、買い物の主役になりつつある。それでも、価格だけを武器にするショップは、コストが上がるたびに立ち行かなくなる。
競合の値下げや送料の変更は、決算の数字より先にサイト上に表れる。自社と競合の価格と送料を定点で見る習慣が、前提の変化に気づく助けになる。
倒産件数は業種別の公表値で追えるが、閉店やサービス終了は数字に残りにくい。サイトの更新や在庫の有無も、撤退の兆しとして観察できる。
