2026年1-8月、不動産の売買や賃貸仲介を手がける会社の倒産が86件に達した。2025年に記録した過去最多の133件に迫るペースである。
この記事では、帝国データバンクの調査と日本銀行の金利政策を並べ、不動産業の倒産が増える理由を整理する。金利と競争という2つの変化を順に見ていこう。

不動産倒産は過去最多に迫る
2026年1-8月の倒産は86件で、前年同期の87件とほぼ同じ水準だった。負債総額は約79億8,300万円で、前年同期から66.6%増えている。件数より金額が膨らんでおり、中規模の倒産が増えた。
2026年も通年で約130件程度が見込まれ、高水準が続く見通しである。過去最多だった2025年の水準に迫るペースが続いている。
負債5000万円未満が7割を占める
規模別では、負債5000万円未満の小規模事業者が60件で全体の69.8%を占めた。地域別では関東が38件、近畿が24件で、大都市圏だけで7割を超える。小さい会社が都市部で淘汰されている構図である。
小規模な倒産が増える背景には、顧客獲得競争の激化がある。帝国データバンクは、デジタル投資の差が大手と中小の格差を広げていると分析している。
宅建業者13万社の競争激化
国土交通省の調査によると、2025年3月末時点の宅建業者は13万2,291業者で11年連続の増加だった。法人事業者は11万9,902業者で、前年から1.8%増えている。供給側が増え続ければ、顧客獲得の競争は激しくなる。
業者数が増えれば、同じ物件を扱う会社も増える。賃貸の仲介では、オーナーとの関係づくりや入居者対応の質が問われるようになる。
DX投資が広げる大手と中小の差
オンライン内見やAIを使った物件提案など、大手はデジタル投資で顧客を囲い込んでいる。投資余力のない中小は同じ土俵に立てず、顧客獲得の格差が広がる。帝国データバンクは、この格差が倒産件数の高止まりにつながっている可能性を指摘する。

金利1.0%が変える資金繰り
日本銀行は2026年6月の会合で政策金利を1.0%に引き上げ、1995年以来31年ぶりの水準とした。それまでの水準は0.75%であり、0.25%の利上げである。借入金の利息負担は増え、物件を抱える会社ほど影響が大きい。
金利が上がると、賃貸経営の採算も変わる。変動金利で借りている事業者は、返済額の見直しが迫られる。
野村證券は、次の利上げについて2026年12月をメインシナリオに置いている。金利の上昇がしばらく続く前提で、資金計画を立てる必要がある。
賃貸管理の会社は、オーナーから預かる物件の稼働を維持しながら、修繕費や人件費の上昇にも対応しなければならない。その負担は、オーナーとの契約条件に反映しなければ吸収できない。
物件情報サイトの使い勝手や内見のしやすさは、申し込み数の差になって表れる。デジタル対応は、もはや一部の大手だけの話ではない。
最後に: 金利と競争を定点で追う
不動産の倒産は、金利というマクロの変化と、宅建業者増加という競争の変化が重なって増えている。どちらも決算の数字だけでは変化に気づきにくい。
競合の料金改定や新規開業、撤退の動きは日々のページ更新に表れる。金利と競争の両方を定点で見ることが、資金繰りの判断を早める。
自社が扱うエリアの成約価格や賃料、競合の店舗数といった基本データを記録しておく。比較の基準があれば、金利や競争の変化を早く察知できる。
金利の水準そのものは自社では動かせない。しかし、借入の条件や在庫の持ち方は自分で選べる。外部環境の変化を前提にした備えが、生き残る会社とそうでない会社を分ける。

