2026年1月、帝国データバンクは2025年の「飲食店」の倒産動向を公表しました。倒産は900件で、3年連続の増加と過去最多の更新です。

客足は戻り、インバウンドも回復しました。それでも倒れる店が増えているのはなぜか。価格競争とコスト上昇のデータを追います。

飲食店倒産の内訳(酒場204・中華179・日本料理97)

帝国データバンクの集計は、負債1000万円以上の法的整理が対象です。この数字には、それより小さな閉店や廃業は含まれていません。

飲食店の倒産は900件で過去最多

2025年の飲食店の倒産は900件で、前年の894件から0.7%増えました。負債1000万円以上の法的整理を数えた数字で、3年連続の増加です。

業態別では、居酒屋を中心とする酒場・ビヤホールが204件で最多でした。前年から3.8%減ったものの、2023年以降3年連続で200件を超えています。

酒場・ビヤホールは減少したものの高水準が続き、中華・東洋料理店と日本料理店は過去最多になりました。増える業態と減る業態が分かれています。

負債総額が減った意外な理由

負債総額は約442億2700万円で、前年の約600億円から大きく減りました。負債5000万円未満の小規模倒産が696件と、全体の77.3%を占めています。

倒れたのは、大きなチェーンではなく小さな店です。負債額のトップは居酒屋を運営していたフーディアム・インターナショナルで、約15億1700万円でした。

負債総額の減少は、倒れる店の規模が小さくなったことを示しています。金額だけを見ると改善に見えますが、件数は増えています。

出典: 帝国データバンク『「飲食店」の倒産動向(2025年)』p.1(https://www.tdb.co.jp/report/industry/20260113-insyokuten2025/, 閲覧日2026-06-19)

値上げできない価格競争の構造

帝国データバンクの価格転嫁調査では、飲食店業界の価格転嫁率は32.3%でした。全業種平均の39.4%を下回っています。

食材費や人件費、光熱費が上がっても、価格に乗せきれない状態です。同業との競合が激しく、値上げをすれば客が離れるというジレンマがあります。

メニューの値上げは、客数と客単価のバランスを見ながら決めます。上げ幅が大きいほど、客離れのリスクも大きくなります。

価格転嫁率が低い業界では、コスト上昇分がそのまま利益を削ります。原材料の高騰が続くほど、体力の差が倒産件数に表れます。

客足は戻っているのに倒れる

日本フードサービス協会の調査では、2025年の会員社の売上は前年比107.3%でした。客数は102.9%、客単価は104.3%で、売上の伸びは値上げの寄与が大きい状態です。

業態別では、中華・東洋料理店の倒産が179件で13.3%増、日本料理店が97件で26.0%増えました。客単価の高い業態でも淘汰が進んでいます。

客単価の伸びは客数の伸びを上回っており、売上の回復は値上げに支えられています。値上げができるかどうかで、店の体力に差が出ます。

出典: 日本フードサービス協会『外食産業市場動向調査 令和7年(2025年)年間結果報告』p.1(https://www.jfnet.or.jp/wp/wp-content/uploads/2026/01/nenkandata-2025.pdf, 閲覧日2026-06-19)

飲食店の倒産増加を生む3つの圧力(物価高・人件費・価格競争)

淘汰が進む業態とコストの行方

倒産が増えたのは、コロナ禍の給付金で延命していた店と、2次会需要が減った日本料理店です。回復の波に乗れない店から順に退場しています。

帝国データバンクは、都心部の不動産価格上昇でテナントの賃料負担も高まると見ています。コストの山は、しばらく続きます。

価格以外の価値を作れるかが、次の焦点です。立地や時間帯、メニューの組み合わせなど、差別化の材料はいくつもあります。

飲食店倒産900件の3つの数字(900件・442億円・77.3%)

最後に: 店の数より構造を見る

飲食店の倒産は、景気の良し悪しだけでは説明できません。客足が戻っても、価格に転嫁できなければ利益は残りません。

数字を見るときは、件数と負債額を分けて確認します。小さな倒産が増えているのか、大きな倒産が起きたのかで意味が変わるからです。

同業の動きを見るときは、出店数や売上だけでなく、価格改定のタイミングとメニューの構成も合わせて追うと変化が見えます。数字の裏の構造まで見に行きましょう。