2030年にIT人材が最大79万人足りなくなる。この数字は、経済産業省が2019年4月に公表したIT人材需給に関する調査に基づく試算だ。
ただし、79万人は条件次第で変わる幅の上限である。この記事では、試算の中身と、企業が実際に取れる打ち手を整理する。

79万人はどう試算されたのか
調査は、IT関連産業の従事者数と教育機関からの入職者数などをもとに、2018年から2030年までの需給を試算した。2030年のIT人材の供給は113万人と見込まれている。
一方で需要は、DXやAIの広がりによって大きく膨らむと仮定された。需要の伸びを高く置いた場合、供給との差は約79万人に達する。
供給の見通しは、2018年の103万人から2030年に113万人へ増える計算だ。それでも需要の伸びに追いつかないというのが試算の要点である。
3つのシナリオで見る需給ギャップ
需給ギャップは、需要の伸び方によって低位で約16万人、中位で約45万人、高位で約79万人と3通りに示された。上限と下限では5倍近い開きがある。
79万人だけが独り歩きしがちだが、これは最も需要が伸びた場合の値だ。自社の計画を立てるときは、幅を持たせて考えるほうが現実的である。
幅を持たせることは、計画づくりにも役立つ。高位の79万人を前提に大量採用を決めるより、複数のシナリオで必要人数を試算するほうが安全だ。
数字を1つだけで使う危うさ
試算の公表から年が経ち、その後のAIの進展や働き方の変化は前提を揺さぶっている。単一の数字を根拠に採用計画を立てるのは危うい。
大切なのは、どの役割が足りないのかを自社で特定することだ。先端技術を扱う人材は不足する一方で、定型的な工程は自動化が進むとみられている。
IPAの調査では、人材の量が不足していると感じながらも、人材確保を行っていない企業が19.4%あった。必要性を認識しながら動けていない状態だ。
DX人材はすでに足りていない

IPAが2025年に公表したDX動向2025では、DXを推進する人材が量的に不足していると答えた企業は8割を超えた。米国やドイツと比べても、日本の不足感は際立っている。
同調査では、特にビジネスアーキテクトの不足が突出していた。経営とITの間をつなぎ、変革を設計できる人材が足りていない。質の面でも不足は深刻で、過不足はないと答えた日本企業は3.8%にとどまった。
企業規模で成果に差が開くDX
DXに何らかの形で取り組む企業は全体で77.8%に達した。しかし従業員1001人以上の企業では96.1%なのに対し、100人以下では46.8%にとどまる。
人材の獲得競争では、規模の差がそのまま投資の差になりやすい。中小企業が同じ土俵で人材を奪い合うのは現実的ではない。
米国とドイツでは、301人以上1000人以下の企業が最もDXに取り組んでいる。日本は規模が大きいほど進むのに対し、海外では中堅層の取り組みが最も高い点が対照的だ。
企業が取れる現実的な打ち手

打ち手は大きく3つに分けられる。採用、社内の育成、そして外部の力の活用である。
IPAの調査では、日本企業は社内人材の育成や既存人材の活用に偏り、外部の専門人材の活用が少ない。すべてを自前でそろえるのではなく、業務を分解して外部に任せる範囲を決めることが重要だ。
どの業務にどんなスキルが必要かを書き出せば、採用、育成、外注のどこで埋めるかが見えてくる。人材不足は、仕事の進め方を見直す機会でもある。
外部に任せる範囲を具体的に示せれば、発注の行き違いも減らしやすい。まず業務の流れを書き出し、任せる部分と自社に残す部分を分けることから始めたい。
最後に: 数字の幅を前提に備える
79万人という数字は、条件次第で16万人にもなる幅のある試算だ。それでも、IT人材の不足感が高いままであることは複数の調査で共通している。
自社に必要な役割を定義し、採用・育成・外部活用を組み合わせる。競合の採用ページや技術ブログの変化も、人材投資の動きを映す手がかりになる。
