訪問介護の倒産が、3年連続で過去最多になった。2025年の介護事業者の倒産は176件で、2年連続の最多更新である。
この記事では、東京商工リサーチの調査と厚生労働省の審議会資料から、介護事業者の苦境の中身を整理する。人材不足と制度の変化という2つの論点を追う。

介護事業者の倒産は176件
東京商工リサーチの調査によると、2025年の介護事業者の倒産は176件でした。2年連続で過去最多を更新し、原因の8割にあたる140件が売り上げ不振によるものです。
内訳をみると、訪問介護が91件で最も多く、通所・短期入所が45件、有料老人ホームが16件と続きます。都道府県別では東京と大阪が17件で並び、北海道の12件、神奈川と愛知の11件が上位に入りました。
訪問介護91件が突出している
訪問介護は全体の約半分を占めます。東京商工リサーチは、2024年度の介護報酬マイナス改定が訪問介護の経営を直撃したとみています。
厚生労働省の審議会でも、委員から「昨年度の基本報酬の引き下げが大きな打撃になっている」との指摘が出ました。訪問介護は、人材不足に加えてガソリン代などの運営コストの上昇にも直面しています。

小規模事業者ほど倒れやすい
倒産した事業者の規模を見ると、資本金500万円未満が73%、負債1億円未満が80%、従業員10人未満が81%でした。事業規模の小さい会社がほとんどで、体力の差がそのまま退出につながっています。
人手不足の影響も数字に表れています。帝国データバンクによると、2025年度の人手不足倒産のうち老人福祉事業は22件で、業種別の過去最多を更新しました。
人手不足と物価高という二重苦
介護の仕事は、利用者と直接向き合う労働集約型です。職員が辞めればサービスを提供できなくなり、事業所の売り上げはそのまま減ります。採用難と離職が同時に進むと、事業の継続そのものが難しくなります。
物価高も重なります。食材、光熱費、ガソリン代は上がり続けますが、介護報酬は国が決めるため、事業者が自由に価格へ転嫁できません。自動車で利用者宅を回る訪問介護では、燃料費の上昇が直接、利益を削ります。
介護を巡る環境は2026年に入っても厳しいままです。業種全体の人手不足倒産は1月から8月で333件に達し、前年同期より4割近く多い水準で推移しています。

介護報酬改定で現場はどう変わる
2026年度の臨時の介護報酬改定では、全体の改定率が2.03%となりました。2%超の引き上げは2019年10月の臨時改定以来で、政府は「実質的には過去最高水準」と説明しています。
全職種を対象に月額1万円の賃上げが行われるほか、生産性向上に取り組む事業者には最大9千円が上乗せされます。訪問看護や居宅介護支援も新たに処遇改善加算の対象になり、2026年6月から施行されました。
今回の改定では、介護施設の食費の基準額も1日あたり100円引き上げられます。2%を超える改定率は、2019年10月の臨時改定(2.13%)以来です。
ただし、この改定は2027年度の本改定までの単年度の措置です。物価上昇が続く中、次の改定までの間に経営が悪化する事業者が出る可能性は残っています。
帝国データバンクによると、2025年度の人手不足倒産全体は441件で、前年度の約1.3倍に増えました。介護に限らず、人手不足倒産は業種を問わず広がっています。
最後に: 制度と現場のあいだ
介護報酬は国が決め、倒産は現場で起きます。制度が動くまでの間、事業者は自分の力で人と資金を守らなければなりません。
同じ地域で事業所が減れば、利用者の受け皿も失われます。競合の募集条件やサービス体制の変化を定点で見ることが、自分の事業所の立ち位置を確かめる手がかりになります。
