2025年、小売業の倒産は2193件でした。帝国データバンクの集計で、2000年以降では2008年に次いで2番目に多い水準です。
一方で、消費者向けのネット通販市場は26兆円を超えました。店舗と通販の競争はどこまで進んだのか、公開統計から現在地を整理します。

帝国データバンクの集計では、小売業はサービス業、建設業と並ぶ倒産の多い業種です。7業種のうち6業種で前年を上回りました。
小売業の倒産は2193件だった
2025年の小売業の倒産は2193件で、前年の2087件から5.1%増えました。2008年の2206件に次ぐ多さで、増加は4年連続です。
業種を細かく見ると、飲食料品小売が340件と前年から増え、飲食店も900件で過去最多でした。生活必需品を扱う業態でも淘汰が進んでいます。
倒産件数は、小売業のなかでも業態によって濃淡があります。同じ小売業でも、扱う商品によって競争の相手が変わります。自社と近い業態の数字を探すと、変化に気づきやすくなります。
何が小売の資金繰りを削るのか
原因別では、物価高倒産949件のうち小売業が216件で2番目に多くなりました。仕入れ価格の上昇を販売価格に転嫁しきれない構図です。
ゼロゼロ融資の返済後倒産も636件あり、小売業が141件で最多でした。借入の返済と仕入れの上昇が重なると、小さな店から資金が尽きます。
物価高倒産は2年連続で過去最多を更新しており、小売業は建設業に次いで多くなりました。仕入れの上昇が長引くほど、価格転嫁の遅い店から体力を削られます。
26.1兆円に広がるEC市場
経済産業省の調査では、2024年の消費者向け電子商取引(BtoC-EC)の市場規模は26兆1225億円でした。前年から5.1%増え、EC化率は9.8%です。
物販系では食品・飲料・酒類が3兆1163億円と最も大きく、衣類や家電が続きます。通販は特別な売り方ではなく、生活の主要な購買経路になりました。
EC化率は9.8%で、まだ1割程度です。ただし分野ごとの差が大きく、書籍や家電ではEC化率が4割を超えています。

店舗の退出は倒産だけではない
東京商工リサーチによると、2025年の小売業の休廃業・解散は7903件で、前年から9.7%増えました。倒産より静かな形の退出が続いています。
ネット通販などの無店舗小売業の休廃業は408件で56.3%増、ミニスーパーなどの各種商品小売業は217件で30.7%増でした。通販側にも競争の波が及んでいます。
休廃業は倒産と違い、裁判所を経ずに事業を畳む形です。黒字のまま退出する企業も約半数あり、静かな競争の結果が数字に表れます。
ネット通販との競争の現在地
店舗と通販は、単純な置き換えではありません。食品や日用品は実店舗の強みが残り、衣類や家電は通販の比率が高い状態です。
小売の倒産が増えているのは、通販に負けたからだけではなく、仕入れと人件費の上昇に価格が追いつかないためです。競争の軸は、品ぞろえと価格の両方に広がっています。
価格の比較はネット上で簡単にできます。店舗側は、品ぞろえや接客、配送など価格以外の価値で差をつける必要が増しています。

最後に: 店と通販を分けて見る
小売の変化を見るときは、倒産件数と市場規模を分けて考えると整理しやすくなります。市場が伸びていても、個々の店の競争は厳しくなります。
競合の変化を追うときは、自社と同じ商圏の店か、ネットで広域に競合する店かを分けて考えます。競争相手の範囲が違えば、見るべき数字も変わります。
競合の値付けや品ぞろえの変化は、月単位で起きます。統計は四半期や年単位なので、日々の観察と組み合わせて見ていきましょう。
