町のクリニックと歯科医院で、倒産が増えている。東京商工リサーチの集計では、2025年度の医療機関の倒産は71件となり、20年間で最多を更新した。

この記事では、倒産の内訳と背景を公表資料から整理する。医院の経営環境がどう変わったのかを数字で見ていこう。

2025年度の医療機関倒産の内訳

医療機関の倒産は20年で最多に

2025年度に倒産した病院・クリニック・歯科医院は合計71件で、前年度から20.3%増えた。コロナ禍で支援が厚かった2020年度の25件から、右肩上がりに増えている。破産が69件と97.1%を占め、再建型の民事再生は2件だけだった。

出典: 東京商工リサーチ『2025年度の「医療機関」倒産 20年で最多の71件』p.1(https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1202743_1527.html, 閲覧日2026-07-04)

クリニック32件と歯科31件の意味

業態別ではクリニックが32件、歯科医院が31件で、いずれも20年間で最多である。歯科医院は前年度の20件から1.5倍に増えた。20床以上の病院は8件で前年度を下回ったが、コロナ禍以降では2番目の高さだった。

倒産の原因は収入減が中心である。販売不振が47件で最多となり、長期的な業績悪化を意味する既往のシワ寄せが16件と続く。患者の減少や診療報酬の改定で、収益の悪化に歯止めがかかっていない。

2026年上半期の医療機関の倒産は38件で、上半期としては2009年に次ぐ2番目の多さだった。増加の勢いは2026年度に入っても続いている。

患者数が減る中での獲得競争

人口減少に伴い、患者数のパイは広がらない。経営者の高齢化や人手不足、医療設備の老朽化も重なる。限られた患者を巡って、医院同士の競争は厳しくなる一方である。

出典: 帝国データバンク『医療機関の倒産・休廃業解散動向調査(2025年)』p.1(https://www.tdb.co.jp/report/industry/20260123-iryoukikan2025, 閲覧日2026-07-04)

帝国データバンクの調査では、医療機関全体の80.3%を診療所が占めており、休廃業や解散が増え続ける最大の要因は診療所の経営者の高齢化と後継者不足にある。倒産は氷山の一角にすぎない。

厚生労働省の第25回医療経済実態調査では、一般病院の約7割、クリニックの約4割が赤字とされる。赤字は一部の例外ではなく、業界全体に広がっている。

診療報酬とコストのバランス崩壊

診療報酬は公定価格であり、物価や人件費の上昇に合わせて自由に引き上げることはできない。光熱費や人件費、医療材料費は上がり続けており、収入と支出のバランスが崩れている。

2025年度は負債1億円未満が33件で全体の46.4%にとどまり、中堅規模の医院の倒産が目立った。体力のある医院でも、環境の変化には耐えられない時代である。

2026年6月には診療報酬が改定された。ただし、収入が増えるかは不透明であり、コスト上昇を打ち消す保証はない。

医療機関倒産の主な原因

後継者不在が招く休廃業の増加

倒産の前に、休廃業を選ぶ医院も多い。経営者の高齢化が進み、後継者がいなければ、黒字でも閉院の判断になる。開業医の世代交代は、業界全体の課題である。

医療機関の撤退は、地域の受診機会の減少に直結する。高齢化が進む地方ほど、その影響は大きい。

医院の経営では、リピート受診の多さが安定収益の鍵になる。新規患者を集めるだけでなく、通い続けてもらう工夫が求められる。

医院を閉じれば、通院していた患者は別の医院を探すことになる。競合の撤退は、残る医院にとっては患者が移ってくる機会でもある。

最後に: 開業環境の変化を見張る

医療機関の倒産は、患者の減少とコスト上昇という構造的な要因で増えている。診療報酬の改定だけでなく、近隣の開業や閉院の動きも経営に影響する。

競合の動きは決算資料に載る前に、求人やホームページ、口コミに表れる。地域の医療環境の変化を定点で見ておくことが、医院経営の判断材料になる。

自院の患者数や単価の変化を記録しておけば、地域の競争環境の変化に気づきやすくなる。数字を定点で追う習慣が、先手の判断を支える。

医療機関を襲う3つの変化